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会社が傾く予兆|ブラック企業で給料が遅れたので会社を辞めた話【給料の遅配】

こんにちはユレオです。

世の中の多くの方が労働を対価に給料を得るサラリーマンであったり、時間給を得るパートやアルバイトなどの仕事をされているかと思います。

改めて説明するまでもないですが、雇用主と労働者の間には「労働力を提供する代わりに給料を受け取る」というごく当たり前の労働契約が交わされています。

それゆえ、「働いたのに給料が得られない」や「働いてもないのに給料が得られる」というのは明らかに不自然なお話しで、場合によっては法律に抵触するものです。

こうした法律に抵触する状況はめったに起きるものではありませんが、私は「働いたのに給料が得られない」という珍しい状況を経験しました。

本日は私が以前働いていた会社で給料の支払いが遅れる「給料の遅配」が起きたお話しをしたいと思います。

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パブリッシャーとデベロッパーの違いについて

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私は「ゲーム業界」という特殊な業界で仕事をしています。

その為、一般的な会社組織と当てはまらないところがあるかもしれませんが、簡単にゲーム業界の構造についてお話ししたいと思います。

ゲームを制作して販売する会社には大きく分けると「パブリッシャ―」と「デベロッパー」の2つの立場があります。

パブリッシャーとはゲームを発売する会社で、デベロッパーとは実際のゲームを開発する会社とになります。

もちろん中には自社開発して販売を行うパブリッシャーも存在するため、世のゲームはすべてデベロッパーによって作られるわけではないですが、コストを削減するために多くのパブリッシャーが開発の一部や場合によっては全部をデベロッパーに依頼してゲーム制作を行っています。

ゲームを作るには資金が必要で、ゲーム開発の技術がある会社でも資金が無ければタイトルを発売するどころか会社の維持や人材の確保をすることもままなりません。

パブリッシャーは資金を提供することで、自社ブランドで発売するタイトルが確保出来てメーカーの評価やイメージを上げて、利益を得ることが出来ます。

また、パブリッシャーが自社のIP(※)を持つ場合、ゲームタイトルの販売による利益以外に、グッズ販売等でIPを活用することで新たな収益が生まれます。
*intellectual property(インテレクチュアルプロパティ) = 知的財産

ここまで簡単ですが「パブリッシャー」と「デベロッパー」の2つの立場を説明いたしましたが、皆様すでにお気づきの通り2つの立場は完全な対等ではなく、たとえ「下請法」で守られていたとしてもパブリッシャーとデベロッパーで上下関係がどうしても存在します。

【下請法とは】
下請法(下請代金支払遅延等防止法)は,親事業者による下請事業者に対する優越的地 位の濫用行為を取り締まるために制定された特別の法律です。 例えば,下請事業者に責任がないのに,親事業者が発注後に下請代金の額を減じること は禁じられています。

多くの場合はデベロッパーは資金を提供してくれるパブリッシャーの方針に従い、パブリッシャーの意向に沿ったゲーム制作を行うため、デベロッパーはパブリッシャーの方針の変更に会社が振り回されることになります。

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パブリッシャーから開発中止の判断が下った

これは私が20代の頃の出来事で、私が中小企業のゲーム会社に勤めていた時のお話しです。

とあるタイトルの開発に参加してほしいという話を受けてヘッドハンティングされる形で転職をしたのですが、その会社の規模はそれほど大きくはなく、社員の大半は「契約社員」「派遣社員」「アルバイト」といった形態でした。

私は正社員として入社したので、それなりに責任のある仕事を任されていたのですが、パブリッシャーに持ち込み企画として始まった開発状況は決して良い感じではありませんでした。

ゲームの企画内容自体に目新しさを感じず、またグラフィック表現もありふれたものであり、「ゲームの売り」が感じられないタイトルでした。

しかし、それなりにパブリッシャーから予算が付いたタイトルであったため、当時の会社は「契約社員」「派遣社員」「アルバイト」を大量に雇って開発を進めて、オフィスが手狭になったので新たなフロアを借りるほどの規模に膨れ上がっていました。

そうした折、アルファ開発まで移行したのになかなか承認が下りず、数か月延長して開発が進めていたのですが、3度目の提出で承認が下りず開発中止の決断が下されることになります。

企画を持ち込んだ際の評価は高く、時間がかかっても開発は進むと楽観視していた会社の上層部は蜂の巣をつついたような騒ぎになり、何度もパブリッシャー側に足を運んで説得を試みたようですが、決定は覆ることはありませんでした。

突然の派遣切りが始まった

さて、パブリッシャー側が開発を中止する決定を下したわけですから、以後の仕事はなくなり、当然資金ぶりが悪化します。

もともと、会社規模に比べて人を雇いすぎている節があり、上層部が「開発が中止になる」というリスクを考慮していな運営状況であり、開発ラインも1本しかなかったので、いきなり会社の存続を揺るがす事態に発展します。

会社としては経営難に陥る前にできることとして、まずは人件費を削減するために派遣切りが始まりました。

同時にアルバイトの方も解雇通知を出して、契約社員に関しても今後の契約は更新しないことを伝えます。

この時、私は仲の良い経理担当の島崎さんと昼ごはんを食べながら雑談がてら会社の状況を尋ねました。

島崎さん、実際のところ会社は大丈夫なんですか?(`・ω・´)

うーん、ここだけの話にしといてほしいんだけど、会社の資金はあと3ヶ月ほどでショートしそうなんだよね~

えっ!まじですか!!やばくないですか?島崎さんお子さん生まれたばかりなのに(;´・ω・)

今社長が銀行からお金を融資してもらうための経営計画書を書いてるよ。まーなんとかなるんじゃないかな?

島崎さんの言葉にはやや余裕を感じたので若干安心したのですが、その後しばらくは会社に行っても大した仕事は無く、新たな仕事を取る為の企画書の作成の手伝いなどをする日々が続きます。

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会社が傾く予兆について

私は経理担当の島崎さんからある程度の話を聞いていたので、会社の状況が良くないことを察していたのですが、周囲の同僚の反応は「転職のために動き出す方」と「何とかなると楽観視している方」の大きく二つに分かれていました。

私は前者の方で転職先を探し出したのですが、慌てて転職先を見つけて失敗しないようにじっくり吟味しながら転職活動を行っていました。

会社がパブリッシャーより開発中止の判断を受けてから4カ月ほど経過して、ガラガラになったフロアで、大した仕事をしていない状況が続いたのですが、この間にいろいろと「会社が傾く予兆」を見てきました。

  • 派遣社員やアルバイなどを一斉に解雇する。
  • 社長の出勤率は極端に悪くなる(金策に走っている?)
  • 社長が電話口で「金貸して」としゃべってるのが聞こえてくる。
  • 銀行系の人方と思われるスーツ姿の人が頻繁に会社に訪れるようになる。
  • 会社の上層部メンバーが夜の21時頃からスタートする謎のMTGを定期的に始める。
  • ディレクターが「契約を取る」と言うのが口癖になり、「面白いゲームを作る」ということに関心を失い始める。
  • 資金を調達するために、開発したことがないプラットフォームで契約を取ろうと奔走しだす。(技術者いないのにどうすんの?)
  • 交通費に上限が設けられる。
  • 「社長さんいる?」というような電話先の方が名乗らない電話が増える。
  • 社長が突然ゴルフを始める。(営業?)
  • 「我々はゲーム開発が仕事なんてなんて幸せなんだ」という謎の幸福論が聞こえ始める。

そして5ヶ月目を迎えようとしていたころ、経理の島崎さんが退社されるという事態が発生します。

表向きはご家族の健康状態の悪化で地元に帰るという内容でしたが、裏の事情は分かりません。

島崎さん、お疲れさまでした。一度地元に戻られるんですね。(/_;)

うん、家族の件もあるし一度今後のことをゆっくり考えたいと思ってね。

私も今転職先を探しているんですが、まだ決めかねている感じです。(;´・ω・)

ユレオさんなら何とかなると思うよ、多くは伝えられないけど早めに動くといいと思うよ。頑張ってね。

あまり多くは語ってくれませんでしたが、経理担当が退社する事態は会社として良い状況と思えず、私は転職活動に本格的に力を入れて動き出すことにしました。

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給料の遅配が言い渡された

経理担当が居なくなり、社長の奥さんが経理を担当されることになったのですが、会社の状況は変わらず、開店休業状態が続いていました。

そしてついに「給料の遅配」という恐れていたことが起きます。

いつものように仕事もないのに出社したところ、朝から会社の上層部の方がそろっており、朝礼を行うという話を始めました。

いよいよここまでか… (;´・ω・)

多くの同僚が予想をしていたのは「倒産」だったのですが、この時朝礼で話され内容はよりまずいものでした。

内容を要約すると以下のような話でした。

  • 大きなパブリッシャーと契約が結べそうである。
  • 事業拡大の為に新たな会社を立ち上げようと考えている。その為に従業員持株制度の導入を検討している。
  • 現時点では苦しいが、会社に出資しくれれば数年後大金が手に入る。
  • 今は会社の状況は厳しいので給料は満額払えないことになり、給料が遅配することになるが、一時的なものなので苦しいだろうが頑張ってほしい。
  • ゲーム制作に大切なのは「心」であり「お金」ではない。

かなりの熱弁で語られていましたが、いろいろとブラック臭がする内容で、感がいい人には「あっ、これ逃げなきゃやばいやつだ」というのがひしひしと伝わり、給料も満額出なくなり、また支払日が遅れるようになります。

そして、この朝礼があってから多くの方が転職活動を加速させることになり、私ももれなく転職活動を進め、無事に転職に成功することになります。

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最後に

ここまで私が以前働いていた会社で給料の支払いが遅れる「給料の遅配」が起きたお話しをしてきました。

私は転職をした為、最後はどのような顛末を迎えたかはわかりませんが、この会社は倒産したという話はまだ聞いていない為、一応は残っているようです。

その時の同僚とはばらばらになりましたが、一部の方とは連絡を取っており、また現在の職場で偶然再会を果たすという出来事もありました。

会社が傾く状況を見れる経験というのはなかなかないもので、今では貴重な体験をしたぐらいに考えていますが、もう少し若くて経験が浅かったらかなり慌てていたのではないかと思えます。

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